貧血がADHDやうつの原因になるらしい
貧血(鉄欠乏性貧血)がADHDや自閉症などの精神障害や、うつやパニック障害などにも関わっているのではないか、という見方があるそうですね。
先日の受診日に主治医の先生に聞いてみたところ、鉄不足が障害に関連しているらしいという認識はやはりあるようです。
それ以上詳しいことは、残念ながら教えてもらえませんでしたけど。
- 実際の症例から見る鉄不足の影響
- ADHDが鉄分(フェリチン)の不足と関連しているという報告(仏)
- 鉄不足と自閉症児との関連
- 鉄はドーパミン等神経伝達物質の合成に使用される
- むずむず足症候群も鉄欠乏が原因の一つ
- 慢性貧血は心疾患の原因にも
- 血液検査ではフェリチン(貯蔵鉄)値を要チェック
実際の症例から見る鉄不足の影響
貧血(鉄不足)がADHDや自閉症スペクトラム、パニック障害など、さまざまな症状への関連を示唆される臨床例があるとのことです。
下に引用したのは、Facebookで先進的な情報を鋭く発信されている医師・藤川先生の『精神科医こてつ名誉院長のブログ』の記事です。
自閉症、ADHDと鉄不足の関係についてのまとめ、およびその対策 (2016.4.15)
-中略-
鉄不足の原因は胎児の時の母親の鉄タンパク不足
1)妊娠時に貧血を指摘され、
2)産後うつ病になった、
3)産後にパニック障害を発症した、
場合は母親に鉄不足があるのが確実なので、子どもにも鉄不足があると考えるのが妥当早急に小児科でフェリチンを測定してもらう必要があります
早期に鉄不足を発見して治療を行えば臨床症状が改善する可能性が高い
ADHDが鉄分(フェリチン)の不足と関連しているという報告(仏)
大和薬品株式会社のワールドヘルスレポートに、パリの研究グループが行った鉄不足とADHDとの関連についての研究結果が記載されていました。
子どものADHD患者と一般の子どものフェリチン測定*1を行ったところ、ADHD患者の84%にフェリチン値異常が見られ、フェリチン値が低いほどADHDの症状が深刻なことが分かったということです。
2008年の研究ですので、ADHD傾向のあるお子さんをお持ちの親御さんは既にご存知の情報かもしれません。
大人のADHDの方にも関わりがありそうですね。
ちょっと長めになってしまいましたが、以下に引用します。
オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸、ADHD対策に有用
ADHD対策にサプリメントは有用か。期待されているのが、オメガ3脂肪酸およびオメガ6脂肪酸。University of South Australia and CCIRO Nutrition研究者グループが、ADHD関連の行動障害を持つ子供145人に、魚オイル(オメガ3脂肪酸)とプリムローズオイル(オメガ6脂肪酸) を配合したカプセルを与えたところ、15週間で注意力が増し、多動や落ち着きの無さ、衝動性の低下が見られたという。一方、プラセボグループではそうした改善は見られなかったという(2005年)。
また、Pediatrics誌05/5月号に掲載された記事によると、オックスフォード大学の研究者グループが、5~12歳の注意欠陥障害の患者117 人を対象に6ヶ月間の対照研究を実施。被験者に、オメガ3脂肪酸およびオメガ6脂肪酸(6カプセル/日=エイコサペンタエン酸558g、ドコサヘキサエン 酸174mg、γ-リノレン酸60mg)か、プラセボのどちらかを与えたところ、サプリメントグループは最初の3ヶ月で、行動、読み書きに目立った向上が 見られたという。ただし、運動機能ではとくに変化は見られなかったという。
ADHDが鉄分の不足と関連しているという報告もある。パリの研究グループが、子供のADHD患者53人と一般の子供27人(対照グループ)を対象に、体内の鉄分濃度を調べる検査法、フェリチン測定を行ったところ、フェリチン値に異常が見られたのは、ADHD患者グループの84%、対照グループの18% で、フェリチン値が低いほどADHDの症状が深刻なことが分かったという(Archives of Pediatric and Adolescent Medicine’04/12月号)。
鉄不足と自閉症児との関連
また『精神科医こてつ名誉院長のブログ』からの引用です。
改行を入れました。
研究グループによると、鉄は早期の神経発達の過程に重要だと分かっている。
妊娠の40%〜50%で鉄の不足が問題になっていると見られる。
なお、自閉症は、専門的には自閉症スペクトラム障害と呼ばれている。スペクトラムという言葉は、人によって見られる症状が大きく異なり、幅があることを表現している。
研究グループは、2003年から2009年にカリフォルニア州で自閉症スペクトラム障害と診断されたおよそ500人、正常な発達と診断されたおよそ350人を対象として、その子の母親の鉄の取り方との関係を調べた。
妊娠の3カ月前から、生まれた赤ちゃんに母乳を与える時期までを調査対象とした。
この結果、自閉症スペクトラム障害のグループの母親では、鉄のサプリメントを取っている人は、自閉症スペクトラム障害ではない子の母親の6割程度にとどまると分かった。
鉄はドーパミン等神経伝達物質の合成に使用される
鉄はドーパミンやセロトニンといった脳内の神経伝達物質の合成時に使用されます。
その鉄が不足すると、さまざまな問題が起こることがわかってきています。
以下は、神経内科医たがしゅう先生のブログ『たがしゅうブログ』からの引用になります。
また鉄は、蛋白質が分解され各種アミノ酸から神経伝達物質が合成されるのを助ける役割があり、
興奮性の神経伝達物質であるドーパミンや、調節系の神経伝達物質セロトニンをバランスよく作り出す事によって、
精神の安定化に寄与し、ストレスに対抗する力をもたらすからです。
私はかなり長い間貧血に悩まされてきました。
10代の頃から目の下にくまがあって、今もくっきり(笑)
貧血で頭がぼうっとするのは、脳が酸欠状態になるからだと思っていたのですが、脳内の伝達物質が欠乏するせいでADHD症状や脳機能の低下を引き起こし、結果的にブレイン・フォグがかかっていたのかもしれません。
いくつかの脳の機能,とくに神経伝達系に関連した機能は鉄欠乏によって有害な影響を受ける事が示唆されている(Youdim 1988).
たとえば,ドーパミン系は脳において重要な役割を有している.
鉄欠乏はドーパミンD2の受容体の感度を低下させ,おそらく受容体の損失を引き起こす.
この現象は,たとえばセロトニンのような生理活性アミン類や,内因性の鎮静ペプチドの分解反応を損なうことに関連している.たとえば以下の発生が示されている.
すなわち,記憶力や理解力の低下,痛みの閾値の上昇,甲状腺刺激ホルモン(TRH)分泌の低下とその結果生じる甲状腺機能と生体の体温維持機能の低下も起こる.
むずむず足症候群も鉄欠乏が原因の一つ
ちなみにむずむず足症候群も貧血や貯蔵鉄(フェリチン)減少で起こることがあるそうです。
前田呼吸器科クリニックのサイトでも、鉄とドーパミン(ドパミン)の関係について、下のように言及されています。
むずむず足症候群・・・私にもあります。
というか、ADHDの診断が下りるまで、これを多動だと思っていなかったのですよね。
藤川先生はブログ内で、むずむず足症候群を多動症状と捉えても良いというような記述をされています。
慢性貧血は心疾患の原因にも
障害もそうですが、慢性の貧血は心臓に負担がかかります。
赤血球の働きを補うために大量に血液を送り出そうとして、心臓が過剰に働き、その結果、心肥大を起こすのだそうです。
心肥大の状態になっても自覚症状はあまりありません。
血液検査の数値を見た医師から「あなたはもう完全に心肥大ですね」と言われたことがあります*2。
心肥大は心不全の原因にもなり*3、最悪の場合は命にかかわります。
貧血は周りに気づかれにくい上に、自覚があったときにはかなり進行している場合があります。
だというのに、未だに「病気というほどのものではない」だとか、「ちゃんと食べて運動をしていれば貧血になるはずがない」と考えている人も結構います(医師の中にもいます)。
でも、ちゃんとどころか山ほど食べていても、貧血になる人はなってしまうのですよ。
貧血は障害やうつを引き起こす要因である可能性があり、ひどくなると心疾患に進行します。
しっかり検査を受けて、必要であれば治療を受けていただきたいと思います。
血液検査ではフェリチン(貯蔵鉄)値を要チェック
一般的な血液検査では血清鉄の数値を測ります。
ところが、血清鉄の数値に問題がないため「貧血ではないですよ」と言われていても、実は鉄欠乏が進行している場合もあるようです。
鉄とADHD、自閉、気分障害などとの関係を指摘している医師の先生方のブログやFacebook記事では、血清鉄よりもフェリチン値(貯蔵鉄)の数値を測るべきという主張をされています。
血清鉄の数値だけでは鉄欠乏、つまり「隠れ貧血」を見つけることができないのだそうです。
病院などから臨床検査の受託を行っているシー・アール・シーに、フェリチン値と血清鉄値の違いについて説明があります。
こちらによると、鉄の欠乏状態を正確に判断するには血清鉄の数値だけでは難しいとのこと。やはりフェリチン値の測定が有用だと書かれています。
フェリチン値を知りたい場合は、病院での検査時に「血液検査の項目にフェリチン値を入れてください」と希望すればOKです。
企業や自治体での集団健康診断では検査項目を増やすのは難しいかもしれません。病院で検査をしてもらうのが確実です。
体内で鉄が減少していくと潜在的鉄欠乏状態から鉄欠乏性貧血へと進展していきます。
このとき貯蔵鉄は早い段階から利用されて減少しますが、血清鉄は貯蔵鉄からの補給により、比較的末期まで低下しません。
したがって、血清フェリチン値は早期に低下し、血清鉄値は末期まで低下しないことから、鉄欠乏状態を早期に診断するためには血清フェリチン測定は有用です。
また、血清鉄には日内変動があるため、血清鉄単独では鉄の過不足の指標とはならず、血清フェリチンとの組合せ測定は有用です。
※引用した文章には、こちらで適宜改行・空行を入れています。