haloのブログ

個人的体験と信頼できると思われる資料を基に書いていきます

体位性頻脈症候群におけるブレイン・フォグ症状の評価

2つ前の記事で参照した文献の抜粋を載せておきます。
文章が読みづらいかもしれません。
全部読むのが面倒でしたら、色の付いた部分と太字の部分だけ読んでみてください。

halokun.hateblo.jp

シェーグレン症候群財団の患者用啓蒙情報シート「ブレイン・フォグ」

https://www.sjogrens.org/files/brochures/brain_fog.pdf

脳霧は、年齢に不相応で、変動する軽度の記憶喪失を説明する言葉です。
もの忘れ、ぼんやり、混乱、注意を払う能力の低下、集中できない、情報の処理が困難であるという症状があります。

ブレイン・フォグ対策のアドバイスも具体的に書かれています。
ストレスと不安を抑える、リラクゼーション方法を学ぶ、笑う、マルチタスクを制限する、運動する、カフェインとアルコールを控える、脳を鍛える、ボランティアをする、など。


「ブレイン・フォグとは何か 体位性頻脈症候群における症状の評価」

Clin Auton Res。2013年12月 23(6):305-311。
What is brain fog? An evaluation of the symptom in postural tachycardia syndrome


こちらは姿勢性頻拍症候群(POTS)患者のブレイン・フォグ症状を、POTSを持つ138人の被験者*1によるアンケートと精神疲労スコア(WMFI)の回答*2から評価・考察した研究です。

ブレイン・フォグの自覚症状や、改善・悪化の要因が書かれていました。
この文献の対象はPOTSという病気を持つ患者さんたちですが、症状やその改善策は、ブレイン・フォグを持つ人たちに広く参考になるのではないかな、と思います。

ブレイン・フォグの症状として多いもの

POTS患者の青少年の間で認知障害は愁訴のトップに挙げられ、患者からは一般的に「ブレイン・フォグ」と呼ばれています。
しかし、「ブレイン・フォグ」という用語は不正確であり、現在までこの症状の原因は不明です。

(被験者138人のうち)132人の被験者がブレイン・フォグを報告しました。
WMFIスコアは、ブレイン・フォグの頻度および重症度と相関しました(P <0.001)。
ブレイン・フォグ症状の上位に挙がった項目は、「忘れやすい」、「ぼんやりする」、「集中して考えること、コミュニケーションが難しい」などです。
最も多く報告されたブレイン・フォグのトリガーは、身体疲労(91%)、睡眠不足(90%)、長時間の立位(87%)、脱水(86%)、くらくらする(feeling faint)(85%)でした。

回答された自覚症状は、次の表にまとめられています。
「忘れやすい」「思考・集中が困難」「コミュ二ケーションの困難」「精神的疲労」などが多く挙げられています。

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「What is brain fog? An evaluation of the symptom in postural tachycardia syndrome」Table 3

ブレイン・フォグの改善要因と悪化要因

次のものがブレイン・フォグを改善するのに役立つと被験者から報告されています。
・横になる(81%)、
・熱を避ける(68%)、
・水分を多く摂取する(66%)、
・5分以内に少なくとも16オンス(約480ml)の水を急速摂取する(63%)、
・塩分量の高い食事を取る(60%)

また、次のものがブレイン・フォグを悪化させると被験者から報告されています。
・シャワー(61%)
・運動(56%)
・歩行(47%)
・カフェイン飲料の摂取(33%)

ブレイン・フォグは認知に関わる愁訴

被験者の回答から、この研究では、次のように結論付けています。
(1)ブレイン・フォグは精神的疲労に類似した一般的な認知愁訴である
(2)ブレイン・フォグのトリガーおよびモジュレーターが多いことがわかった
(3)POTSにおいて典型的には推奨されないものを含む、POTSにおけるブレイン・フォグ改善に有効であり得る多くの治療ターゲットが存在する

良い睡眠と有酸素運動がブレイン・フォグを改善するかもしれない

また、良質な睡眠と規則的な有酸素運動がブレイン・フォグを改善させ得ると考察されています。

睡眠効率がPOTS患者の認知にどのように影響するかは不明であるが、睡眠の質はPOTSのブレイン・フォグの主要な原因であると推測できる。

急性運動はブレイン・フォグを悪化させると報告されましたが、興味深いことに、規則的な有酸素運動はブレイン・フォグを改善すると報告されています。
(中略)
理由は不明ですが、定期的な有酸素運動は、POTSを持つ青年の他の症状の中で認知を改善する可能性があります。

www.ncbi.nlm.nih.gov




https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26471263
慢性疲労症候群および線維筋痛患者の神経認知障害および機能状態。

*1:女性88%、14歳から29歳までの青年層

*2:主観的な愁訴